アジスロマイシン(ジスロマック)の体内動態

今更知ったがジスロマックの体内動態が生体のDDSともいうべきもので、
信じられないくらい効率がいいシステムだった。

アジスロマイシンは分子内にアミノ基(ラクトン環およびデソサミンのアミノ基)を2つ有しており、
アルカリ性条件下では主に分子型、酸性条件下では電価を帯びた型(イオン型)で存在する。
生体内のpHは、細胞外pH7.4、細胞内pH7.2、細胞中のリソソーム内pH4.5~6.0に保たれており、
細胞外の分子型のアジスロマイシンが細胞膜を通過すると、
細胞内は細胞外に比べて、ややpHが低いため、
細胞外に比ベイオン型の割合が多くなる。
さらに、分子型のアジスロマイシンがリソソーム膜を通過すると、
pHが低いため、リソソーム内では多くのアジスロマイシンがイオン型で存在する。
イオン型のアジスロマイシンは生体膜を通過できないため、
結果として細胞内およびリソソーム内に集積される。
食細胞の遊走によりアジスロマイシンは食細胞内に取込まれた状態で感染病巣へ運ばれる。


ジスロマック1

感染病巣において食細胞が細菌を貪食した結果、食細胞内にファゴソームが形成され、
リソソームと融合しファゴリソソームとなる。
ファゴリソソーム内のpHは中性付近となりリソソーム内で
イオン型であったアジスロマイシンは分子型となり、
食細胞からの遊離が促進されるものと考えられる。
結果、感染病巣内の濃度が高くなる



ジスロマック2

ジスロマックインタビューフォームより 一部改変



2010/12/23更新
15員環マクロライドのアジスロマイシンは他のマクロライドに比べて極性が高く、
肝で代謝を受けずに未変化体として胆汁中に排出される。
しかし炎症組織での半減期は長いため、3日間の経口投与で7日間の抗菌作用を発揮するとされている。

これはアジスロマイシンがヒト多核白血球およびマウスマクロファージなどの
食細胞へ高濃度に取り込まれるためである。
(エリスロマイシンに比較して約10倍高い)

アジスロマイシンでは食細胞によって感染病巣へ運ばれ、
細菌の貪食の際に遊離され効果を発揮するため、
感染病巣内濃度は高く維持し、
また投与後145時間(約6日)においても
感染病巣内濃度は非感染組織の19倍高い値を示す。


杉山正康,(2010),薬の相互作用としくみ第9版,医歯薬出版株式会社,pp68より引用 一部改変



ジスロマックは感染病巣に特異的に集積するという素晴らしい性質を持っている。
まるで魔法のようだ。

注意すべきは同じマクロライド系に交叉耐性を持つところだ。
特にグラム陽性菌はエリスロマイシンやクラリスロマイシンに耐性だと
ほとんどジスロマック(アジスロマイシン)にも耐性である。

クラリスがダメだったからジスロマックという選択肢は
あまり勧められるものではない。
(ほとんどそういう例は見たことがないけど)

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コメント

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No title

いつも、勉強させて頂いています。
ありがとうございます。

3点、教えてください。
上記のschemeの時間経過(1週間効果)が分かりませんでした。
どの部分が合わさって「信じられないくらい効率がいいシステム…」なのか?です。

交差耐性ということは、長期の少量投与も同じということでしょうか?

2g/dayのように投与方法が変わっても、
pk-pd理論から言っても関係ないかもしれませんが、
交叉耐性の問題は変わらないのでしょうか?

以上、教えて頂ければ、幸いです。

コメントありがとうございます。

今回は薬の相互作用としくみという本を読んで
感心したのがきっかけだったのですが、
インタビューフォームだけの引用だったのでわかりにくかったかもしれません。
本文に引用を増やしました。

正直、質問にまともな回答を用意できる自信がないです・・・。

・効率が良いシステムだと思ったのは、
「免疫を担う食細胞に取り込まれ、感染病巣まで運ばれてそこで遊離される」
という抗菌薬にとって最も理想なのではないかと考えられる一連の流れについてです。

薬に工夫(DDS)を施さなくても
成分自体がそういう性質を持っていることに驚きました。

・マクロライドの少量長期投与は耐性抑制と最も相反する問題で
交叉耐性も同じなのではないかと考えています。

抗菌薬を使えば使うほど耐性菌は増えますが、
少量長期投与は耐性に関係なく作用するから「一患者さん」にとっては
いいのかもしれません。
社会的にはどうなのかわかりませんが・・・。

4年前の記事ですがマクロライド耐性肺炎球菌にもマクロライドの効果があるという
記事を見つけました。
http://medical.radionikkei.jp/abbott/final/pdf/060127.pdf

耐性遺伝子の種類にもよるが、
マクロライド結合部位の変異を持つマクロライド耐性肺炎球菌にも効果がある可能性がある
ということでしょうか。

ただ、いつも感染症専門の青木Drがブログ(感染症診療の原則)で言っているように、
結果的には

You use it, You lose it.

となるんじゃないかなぁと私自身は考えています。

特に、小児に使用できる抗菌薬が限られているため、
個人的には長期投与に抵抗があります。

まず貧乏性なので「もったいない」と感じてしまいますね。

小児の肺炎球菌のマクロライド耐性率は80%くらいという記事もあり、
すでに耐性菌ばかりだから「耐性の問題は諦めて使用する」という
考え方もできるかもしれません・・・。

少し前にマクロライド新作用研究会に所属している医師の講演を聞きましたが
「マクロライド推進派」の方々はマクロライドを「抗菌薬」としてではなく
「免疫調節薬」とでもいうような視点で見ているような印象を受けました。

・2g/dayの投与法は
「中途半端な服用をさせない(自己中断させない)」ことで
耐性化の抑制を図っているのではないかと考えています。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2009/2009_03_12.html

長いコメントになってしまいましたが、
今回のコメント(特に後半の耐性の部分)はほとんど裏付けを取っておらず、
単なる私見にすぎません。

こんなコメントですみませんが今後もよろしくお願い致します。

追記

質問と回答がずれているかもしれないため補足です。

・交叉耐性を持っている細菌に少量長期投与しても効くかという意味でしたら、
少量長期投与は耐性の有無に関係なく効くようですので
大丈夫だと思います。

・3つ目の質問が交叉耐性の菌に2g/dayの投与をして効果があるかということであれば、
上記のファイザーのページに24時間後のAUCが上がるということが書いてあります。
なのでAUC/MICが上昇して「効くことがある」かもしれませんが、
耐性を持っている抗菌薬を選ぶよりは
他の抗菌薬のほうが効く可能性があるのではないかと考えています。
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