プレタール(シロスタゾール)の脳梗塞再発予防効果
プレタールについてもまとめてみる。
まず シロスタゾール vs プラセボのCSPS試験
この試験は「相対リスク」41.7%低下というものすごい効果を発揮しているような
宣伝文句だが実際にどうだったんだろう。
相対リスクから本当の効果は見えてこない。
このページの中盤に載っているが、
プラセボ:年5.78%の脳梗塞発症
シロスタゾール:年3.37%の発症率
ということで41.7%の相対リスク低下
3年間のNNTは18.7なので
18.7人を3年間シロスタゾールで治療すれば一人の発症を防げる。
2012/2/8訂正
今更気づいたがNNTが18.7なんだったら
100/18.7で絶対リスク低下は約5.35%である。
なんともあほらしい推測をしていた・・・。
日経メディカルのサイトより引用して比較

この発症率で計算すると若干NNTと相対リスクがずれるので、
実際の発症率はプラセボがもう少し多いかシロスタゾールがもう少し少ないかもしれない。
大雑把に考えるとプラセボ発症率14%
シロスタゾール発症率8%
くらいか?(NNTは16.7なので少しずれてる)
抗血小板薬を飲まなければ3年で100人中14人が発症するが、
シロスタゾールでそれが8人に抑えられる。
さらにプラセボ比較で脳出血の優位な増加がなかったとのこと。
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/csps2/outline.html
次は
CSPS2という シロスタゾール vs アスピリン の試験
これはちょっと面倒なので
内科開業医のお勉強日記から引用
primary endpoint(卒中初回再発発症(脳梗塞、脳出血、SAH)
年次発生:シロスタゾール 2・76% (n=82)、
アスピリン 3・71% (n=119)
(hazard ratio 0・743, 95% CI 0・564?0・981; p=0・0357)
出血性イベント(脳出血、SAH、入院必要出血イベント):
シロスタゾール(0・77%, n=23)、
アスピリン (1・78%, n=57; 0・458, 0・296?0・711; p=0・0004)
頭痛、下痢、動悸、めまい、頻拍はシロスタゾール群でより頻度多し
内科開業医のお勉強日記:CSPS 2 group:シロスタゾール二次予防アスピリン対照二重盲検非劣性トライアル
http://intmed.exblog.jp/11263357/
CSPSと違って脳梗塞だけではなく脳卒中全般を1次エンドポイントに設定している。
それで脳卒中再発の相対リスクが26%低下と宣伝されている。
脳梗塞を減らし、脳出血を増やさないという
シロスタゾールのいいところが結果に出たっぽいな。

http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/csps2/result.htmlより引用
前の記事でプラビックスを少し調べたが、
効果だけみればプラビックスよりいいような気がしてきた。
先発薬の薬価だと
プレタール錠100mg1日2錠で379円と
プラビックス錠75mg1錠の275.8円よりかなり高額。
しかしプレタールにはジェネリックがあり、
シェアが(たぶん)多いシロステート(日医工)やアイタント(東和)を使えば
1日110円くらいで済む。
最近ほぼ全てのジェネリックにも脳梗塞再発予防の適応が追加された。
ただしプレタールに製剤特許など特殊な加工がしてあったりすると、
代替えになるかどうかは不明。
出血性の副作用が少ないので後は
PDE阻害による心負担増大(頻脈)が大きな心配事。
プラビックスはその心配をしなくて良い。
だけどCYP多型の問題で
日本人に効くかどうかいまいち信じきれないプラビックスより、
日本人できっちり結果を出しているプレタールを
信頼してもいいかもしれないと思った。
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コメント
シロスタゾールは内皮機能を改善しない
これらのことから、一部の医者や製薬会社の間で喧伝されている「シロスタゾールが内皮機能を改善する」という学説が全くの嘘である可能性が出てきました。
実際に、シロスタゾールの内皮機能改善作用に関して報告した韓国人学者の論文においても捏造(画像流用)を発見しました(Figure3の最下段のα-Actinの画像が左右"AとB"で同一です)。
また、シロスタゾールを販売している大塚製薬の論文や、東京大学医学部附属病院老年病科の論文でも、30μMから100μMという薬理学的に意味の無い高濃度のシロスタゾールで実験し、「内皮細胞の機能を改善した」と結論づけており、同様の問題を指摘できます。
また、血管内皮細胞に発現し主要な働きをしているphosphodiesteraseのサブタイプは、PDEIV です。
一方、シロスタゾールは、PDEIII の選択的阻害剤です。このことからも、シロスタゾールの血管内皮機能改善作用については疑問がもたれます。
どのような物質でも高濃度で細胞・生体に与えれば機能が変化するのは当然であり、そのような無意味な実験で論文を出し業績を作り上げるという研究態度は正さなければなりません。税金の無駄であり、科学に何の進歩ももたらしません。
Re: シロスタゾールは内皮機能を改善しない
獨協医科大学の論文捏造や二重投稿のことは全く知りませんでした。
全部読んでいるわけではありませんが
もし本当であれば基礎研究では
むちゃくちゃな高濃度で試験が行われているんですね。
臨床研究で捏造や改ざんをしていたら大変なことですが、
某社のMRさんからCSPS2ではアスピリン群に高血圧患者が多かったので、
単純に比較できないと言っていました。
たしかに
高血圧(シロスタゾール9.0%、アスピリン13.9%、p<0.001)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/ebm/csps2/kekka/201003/514337.html
と有意差があるので単純に発生率を比較するのは
無理があるかもしれないと思うようになりました。
No title
歩行は問題なくできますが、足の冷えとしびれ感があり下肢動脈閉塞が進んでいるように思えます。頚動脈エコーは1、8で動脈硬化は進んでいます。
下肢動脈閉塞症の初期からプレタールを使うメリットは考えられますでしょうか?メリットがないなら、症状が進んでから用いたいと思いますが、少しでも初期のメリットがあるようなら用いたいと思うのですが?
ある大学病院の事例では、
70代の男性の中大脳動脈の症状のない狭窄に対して、
1日100mg という少量
(通常成人の1日量は200mg です)
で1年後に狭窄が消失する、
という画期的な効果が報告されています。
動脈硬化で狭くなったと思われる脳の血管が、
1年間程度のプレタールの使用で、
著明に改善したようですが、下肢の動脈においてもそのような効果は考えられますか。