被災地の各避難所で診療した医師の記事(m3より転載)


JMAT活動に従事して、反省点と良かった点とは
2011年3月24日 天野教之(天野医院院長、埼玉県和光市)


反省点

1.支援検討開始してから約36時間後には出発。準備不足は否めない。

2.通常の診療体制ではない救護診療の体制については、
ほとんど知識はなかったが、ネットである程度必要な知識を得られ、
万全とは言えないものの、ほぼ十分な体制を組めた。

3.とにかく時間がなかったため救護診療のノウハウ等について学ぶだけで精いっぱいであり
、被災地の情報入手が不足していた。そのために交通で非常な難儀をしてしまった。

4.自分でできる診療範囲を想定し、被災者の状況を想定して薬剤等の選択を行い準備していったが、
初日に交通に難儀したため、薬剤をそのまま救護所に渡してしまった。
これはとても残念なことで、自分が活動している時間は自分で薬剤を管理していれば良かった。
「持っていった薬を使えていれば」と、何度思ったことか……。

5.被災者の話を聞いてあげることに時間をかけすぎたかもしれない。
避難所は多数あったのに、回れたのはたった6カ所だった。
これについては話を聞いてあげて安心を与えることはできたので、
それで良かったのかもしれない。
しかし、より多くの人の健康チェックをするべきだったかもしれない。
どちらが良かったのか、もう少し自分自身でも検討したい。

良かった点

1.私自身、埼玉生まれの埼玉育ちであるが、
弘前大学出身で大学卒業後もしばらく東北・北海道で勤務していたので、
東北訛りがすべて聞き取ることができた。
同行した私の長男は患者の訴えを聞き取ることができない場面があった。

2. 自己完結型のチーム編成を求められるが、十分な食糧、水、寝具等を確保できた。
実際には、保健室を提供してもらえたが、
いざとなったら十分に車中泊が可能な準備ができた。

3.ワゴン車を借りることができたのは幸いだった。
薬剤その他の荷物を十分に積載することができ、車中泊も可能だった。
実は帰路では仙台から避難できない学生も同乗させてきた。
東北大学では被害甚大なため4月下旬まで休校とされており、
学生には仙台から避難し実家に戻るように勧められていた。
今回は仙台市内の学生であったが、
もし必要であれば帰路は被災者を安全な地域に移動する支援もできたかもしれない。

4.ロジスティック担当を置いたことにより、
仙台からの帰路は十分に休養を取っている者が運転できた
。被災地で疲労困憊していた人間がさらに帰路を運転して帰るのは危険があったと思われる。

5.自院の診療が心配だったが、
普段連携がうまく取れている病院に依頼することで、
医師の派遣を受けることができ、安心して出動できた。

今後のJMAT展開に

1.やはり現地の情報収集を十分に行うべき。交通ルート、現地でのニーズ、
その他。今回、電話も十分に通じない地域に支援に入ったが、
宮城県医師会でも十分な情報を得られていなかった。

今後は情報が得られるようになってくると思われるので、
各県医で得た情報をJMATに伝えてもらえるようになるのではないか
(私の支援活動中にauとNTT docomoの移動基地局が開設された。
現地での通信手段も思うままにならないことも大変だったが、
今後は改善されると思われる)。

2.たぶん、今後は心のケアの必要性、高血圧、糖尿病等の慢性疾患への対処が必要になる。
医師1人、看護師1人、事務員1人の編成でかなりの仕事ができる可能性がある。
大規模な編成ででかけるより、小編成にしてこまめにでかけた方が良いかもしれない。
長期間の支援が必要と思われる。

3.小編成にして短期間の支援を繰り返す方が良いかもしれない。
ただし、その場合、往復の時間が無駄になる。
現在、被災地への交通は自動車に限られる。可能であれば日本医師会、
各都道府県医師会等に動いてもらって各空港等で
レンタカー等を優先的に借りられるようにすると良いかもしれない。

4.今回私は仙台に拠点を置くことができたのが有効だった。
各県医等でJMATチームのための拠点を被災地外の交通の良いところに設けると良いかもしれない。
安全な地域で温かい食事を取り、安心して眠れることは支援者にとって有用。
アパート等を各県医で借り上げてもらい、寝具その他の生活必需品を用意してもらう。

5. 日医でJMATの総合的な電話、ネット等での支援サービスを開始してはどうか。
100チームを展開するとなると、JMAT同士の連絡や日医、
各県医等からJMATへの連絡もスムーズになるかもしれない。

6. 今後は道路事情も好転すると思われるので必要ないと思われるが、
災害初期においてはやはり四駆の車高の高い自動車が役に立つかもしれない。
日医会員の中でもそのような自動車(ランドクルーザー、パジェロなど)を
自家用としている会員も多いのではないだろうか。
そのような方にはあらかじめ登録しておいてもらって、
災害時などには日医で借り上げることも検討できるのではないだろうか。
以前、私もパジェロのロングを保有していたが、こういう時にこそ役に立つのにとほぞを噛んだ。

宮城県女川町の状況について

 最後に、あくまでも女川町での3月21日までの状況だが
、気づいたことは下記。時々刻々と状況変化すると思われる。

1.医薬品は私が持参したもので感嘆の声を上げて喜んでくれたが、
宮城県薬剤師会の支援が入ってかなりの数の薬品が入ってきているようなので、
とりあえずは現地では間に合ってくるだろうと思う。

2.医薬品は救護施設に渡さず、自分で持って歩いた方が良いと思う。
ただし、その場合にカルテを残さないと問題だと思う。
カルテも実は急遽作成して持参したが、救護所に預けてしまい、
自分では使えなかった。
新潟県中越地震の時のフォーマットを自分用に改編した(文末を参照)。
3日間の支援で300枚もあればと思って持って行ったが、使えず残念。

3.できればワーファリンを内服している人のために、
PT-INRの測定機を持っていった方が良いかもしれない。

4.外科的処置が必要な方はほとんどいない。内科医が役に立つ。
せいぜい変形性膝関節症などで痛みがある方。
津波からの避難時に打撲・捻挫。湿布薬を希望される方が多くいたが、
持っておらず残念。

5.便秘に苦しむ人が多く下剤、浣腸液が必要。
酸化マグネシウムも大量に持ち込んだが、自分で処方できず残念。

6.インスリンを失った人も多数あり、インスリンも必要。これは気付かず持参せず。

7.高血圧患者がやたらと多い。しかも、ストレスで血圧上昇。
降圧剤を持って行ったのに使えず残念。

8、女川町の隣町の石巻赤十字病院で心臓カテーテル検査をした人が多数おり、
冠動脈拡張剤がかなり処方されていた。
処方内容に疑問がないわけではないが、
患者さんの不安を考えると同処方を継続してあげたいところだった。
冠動脈拡張剤も必要かもしれない。

9.インフルエンザの流行が懸念されている。
タミフル・リレンザを50人分くらい持参したが、
とりあえずは必要な患者はいなかった。

10.子どもの処方が困難。散剤を分封しにくい。
タミフルとカロナールは当院の門前薬局が支援してくれて、
体重10、20Kg用に分包してくれたのを持参した。
これは救護所では驚きを持って感謝された。

http://www.m3.com/iryoIshin/article/134280/



最近、避難所を回った人医師、看護師に少しだけ話を聞いた。

まず避難所がわからないのでナビに頼ろうとするが
道が通行止めになったりしていて殆ど役に立たないのが
非常に困ったと言っていた。

診療の状況としては多いのが
感冒(かぜ)、便秘、喘息症状、アレルギー様の皮膚疾患。

ニュースでは嘔吐下痢症やインフルエンザが流行しているとされていたが、
行った避難所では嘔吐下痢症はあったものの
インフルエンザはほとんどなかったようだ。

便秘は本当に多くて、
「水不足と下痢で脱水が心配」という意識で行ったが、
逆に「便が溜まって出してあげないとまずい」
という人が多かったとのこと。

喘息症状や皮膚症状は
避難所の衛生状況(埃っぽさや風呂に入れないこと、空気の乾燥)も
あるんじゃないかという印象を受けたらしい。

各避難所で「リーダー」とされている人の心の負担重くなっているとのこと。
頑張ってしまう人ほど大丈夫と言ってしまうが、
実際はそのリーダーも本当にきつい状態かもしれない。
カウンセラーなどによるメンタルケアも必要だと言っていた。

被災地へ持っていく医薬品については
自然災害後亜急性期医療班活動マニュアル
http://www.nagaoka-med.or.jp/shizen_manual200510/04dai2bu.html#06

ここに色々載っている。

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